甲状腺疾患
甲状腺とは

甲状腺は首の前方、のどぼとけの下にあり、正面から見ると蝶が羽を広げた形をした小さな臓器です。血液中に甲状腺ホルモンを分泌して、代謝を正常に保つ大切な役割を担っています。
甲状腺ホルモンとは
甲状腺で作られた甲状腺ホルモンは、血液中に分泌され、全身に運ばれて、脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保っています。
気づきにくい甲状腺の病気
甲状腺の病気は、症状があっても、疲れやすい、のどの違和感、手の震え、不整脈、うつ状態など、他の病気と間違われやすい症状が多くあります。なかなか改善しない症状のある方は、甲状腺ホルモンの値を測定したり、甲状腺の専門医を受診することが大切です。
こんな症状はありませんか?
甲状腺ホルモンに異常があると以下のような症状が現れます。簡単な検査(採血・エコー等)で病態を正しく診断できますので、医師に相談してください。
甲状腺の機能が亢進している場合

甲状腺の働きが必要以上に活発になることでホルモン過剰になり、全身の代謝が高まります。
甲状腺の機能が低下している場合

甲状腺ホルモンが少なくなると、心身の働き全体が低下します。初期の場合は、あまり症状が出ないことも多いので注意が必要です。
甲状腺の検査
甲状腺疾患の診断には、以下のような検査を行います。
血液検査 | 甲状腺ホルモン(FT4、FT3)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺自己抗体などの血中濃度を調べます。 | |
---|---|---|
画像検査 | 超音波(エコー)検査 | 超音波を体の表面にあて、臓器から返ってくる反射の様子を画像にする検査です。 |
CT・MRI検査 | CTではX線を、MRIでは磁気を用いて体の内部を描き出し、周辺の臓器へのがんの広がりや転移の有無を調べます。 | |
穿刺吸引細胞診 | 甲状腺腫瘍内に細い針を刺して細胞を取り出し、良性か悪性かの判断をするための検査です。 |
甲状腺の病気
甲状腺の病気は、大きく分けると、甲状腺ホルモンの分泌が異常になる病気と、甲状腺のなかにしこり(結節)ができる病気に分けられます。
甲状腺ホルモンの分泌が異常になる病気
バセドウ病
体内に甲状腺を刺激する物質(TSHレセプター抗体)ができて甲状腺を刺激し続けることによって起こる病気です。甲状腺が過剰に反応して甲状腺ホルモンを必要以上に作り分泌してしまうため、新陳代謝が異常に早くなり様々な症状があらわれます。バセドウ病に特有の症状としては、甲状腺の腫れ、頻脈と眼球突出があげられます。比較的若い女性に多くみられますが、小児から高齢者、男性も発症する病気です。
橋本病
橋本病は自己免疫の異常によりリンパ球が自己の甲状腺組織を破壊して、慢性炎症が生じる病気であり、慢性甲状腺炎ともいいます。甲状腺ホルモンが不足してくると、全身の倦怠感、むくみ、体重増加、便秘など、甲状腺機能低下症の特有の症状がみられます。好発年齢は20~50歳代が多く、甲状腺の病気のなかでもとくに女性の割合が多く、男女比は約1対10~20程度と言われています。
亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎は甲状腺の痛みや発熱を伴い、甲状腺に炎症が起こる病気です。40~50歳代の女性に多く発症します。
甲状腺にしこり(結節)ができる病気
ろほう腺腫
ろほう腺腫は、甲状腺にできる良性の腫瘍です。カプセルに包まれた結節で、多くはひとつだけです。超音波断層装置や穿刺吸引細胞診などで診断し、悪性の心配がなければ定期的に大きさをチェックします。
腺腫様甲状腺腫
腺腫の様な甲状腺の腫れと言う意味で、甲状腺に1〜複数個のしこり(結節)ができる病気です。腺腫様甲状腺腫は良性の疾患で、血縁者に同じ疾患の方が見つかることも少なくありません。
悪性腫瘍(がん)
甲状腺にできる主な悪性腫瘍には、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、低分化がん、髄様(ずいよう)がん、未分化がん、悪性リンパ腫などがあります。なお、乳頭がん、濾胞がん、低分化がんをまとめて甲状腺分化がんといいます。症状はほとんどみられません。頸部(首の部分)にしこりがあるのを手で触れてわかる程度です。まれに、痛み、飲み込みにくい、声がかすれるなどの症状が現れることがあります。
血液検査、超音波検査、細胞診、CT・MRIなどの検査を行い診断します。
甲状腺がんと新たに診断される人数は1年間に10万人あたり12.3人です(男性では6.8人、女性では17.4人)。年齢別にみた罹患率(りかんりつ)は、30歳ごろから高くなり、70歳代で最も高くなっています1)。若年女性に比較的多いがんで、20〜30歳代の女性では主ながん種の1つです。
乳腺・内分泌外科では、院内の他の診療科と緊密な連携を行い、甲状腺の病気の検査や外科的治療も行っています。
血液検査による甲状腺ホルモン測定と超音波検査で診断できますので、お気軽にご相談ください。